【2/23 今日の朝刊】「全国区」を狙うのをやめたら普通のパンが1億円売れた理由

パンの画像

毎日の気になったニュースを経営の視点で読み解く「今日の朝刊」です。 本日は、2026年2月23日の日経MJから、大阪の老舗ベーカリーが手がけた大ヒット商品「おかんパン」の事例を取り上げます 。

「会社を大きくしたい」「全国で名前を知られたい」と願うのは経営者の本能かもしれません。しかし、その「拡大への執着」が、実は足元にある一番の強みを曇らせているとしたら、それは非常にもったいないことです

今回の事例は、戦略のベクトルを180度変えることで、眠っていたリソースが輝き出した「起死回生」の物語です

「日本全国」から「地元・大阪」への戦略転換

大阪の駅ナカを中心に展開するベーカリー「クックハウス」は、コロナ禍での売上低迷をきっかけに、大きな決断をしました 。記事では以下のように紹介されています。

非常事態宣言の中、店舗の営業制限が続いた。当然ながら売り上げの見通しは立たない事態に。そこで、会社として今後どうしていくのかを改めて考える機会だと捉え、まずは社員の状況を把握することが重要だということになり、社員満足度調査を実施することに決めた。

(中略)

しかし調査結果を見ると「地域に根差した企業としての自負がある」という数値が顕著に高かったのだ。
 多田氏は、この調査結果からを見て、社員の思いに沿った経営をすることを決意。全国展開から「地元・大阪に根差したパン屋さんになる」ことへと方向を大きく変えた。

2026.2.23_日経MJ新聞

当初は全国展開を目指していた多田社長ですが、社員満足度調査の結果「地域に根ざした企業である自負」が強いことを知り、「地元・大阪に根ざす」ことへ方針を転換しました 。

手始めとして、ワークショップを行い、自社の強みやブランドイメージを明確にしていったそうです。

そこで社員から出たアイデアが、「わざわざ店舗へ買いに行きたくなる、お土産パンを作る」ことと、「おかんパン」というテレビ番組などでも象徴的に扱われる〝大阪のおかん〟への着目から出た商品名だった。

2026.2.23_日経MJ新聞

既存の「隠れた」人気商品である「ミルクパン」に、大阪のおかんの焼き印と、社員や一般公募で集めた「おかん語録」をパッケージにあしらいました。

結果、発売1年で売上1億円を突破。SNS投稿は3,000件を超え、テレビなどメディア露出も650件以上にのぼりました 。

全国区のヒットを生むには、あえて「半径5キロの身内」を熱狂させよ

この事例から学べることは、ターゲットをいたずらに広げるのではなく、純度を高めることで「独自の熱量」を生み出す、という原則です。

「誰にでも好かれるもの」を作ろうとすると、特徴が薄まり、誰の心にも刺さらない商品になりがちです。一方で、「自分たちの家族や隣人がクスッと笑えるもの」を突き詰めると、その圧倒的な「手触り感」が共感を呼び、結果として遠くの人まで惹きつける強力なブランドになります。

自社の「足元の資産」を再定義する3つの視点

ここでは、この事例からの学びを応用できる視点を紹介します。

「会社の野心」と「社員の自負」を一致させる

経営者が掲げるビジョンと、現場の社員が誇りに思っていることがズレると、組織の力は分散します。

社員が「うちの会社のここが好きだ」と感じているポイントを徹底的に聞き取ってください 。その「現場の自負」がある場所にこそ、次のヒットの種が眠っています。

「わざわざ行きたくなる」仕組みをデジタルで加速させる

「お土産パン」というコンセプトでしたが、人流の多いターミナル駅での販売はせず、店舗へ足を運んでもらう戦略をとりました。社加えて、内朝礼では、テレビ・SNSでの露出実績や顧客からの声を共有する運用もしているそうです。

webサイトやSNSを「その場所に行く理由」を作るメディアとして活用してください。思わず誰かに教えたくなる要素(今回であれば「語録」や「焼き印」)を作り、共有・拡散(UGC)を前提とした仕掛けを、パッケージやサービスに組み込むことが重要です。

新規開発ではなく「既存の強み」に光を当てる

「おかんパン」の中身は、もともと店舗で隠れた人気商品だった「ミルクパン」でした。

全く新しいものをゼロから開発しようとすると、多額の投資とリスクを伴います。今ある設備や、長年売れ続けている定番商品に「新しい文脈」を乗せることで、低コストかつ高確率での収益を得ることができるでしょう。

まとめ:外を見る前に、内側に眠る「熱」を探そう

今回の事例は、「社員の隠れた熱量」や「ミルクパンの顧客からの隠れた支持」、「地元の愛着」といった、もともとそこにあるものを明確に切り出せたことがポイントといえます。

会社の外にある「大きな市場」を追いかけて、足元にある「社員の熱い思い」や「磨かれた既存技術」を放置してしまうのは、最大の機会損失です。

もし、あなたの会社の社員が、一番自信をもって親戚に進められる商品は何ですか?その商品に「地元のユーモア」をひとつ足すだけで、新たな市場が口を開けるかもしれません。

本日は日経MJの記事から、地域密着戦略の本質を考えました。


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