日の気になったニュースを経営の視点で読み解く「今日の朝刊」です。 本日は、2026年3月2日の日経MJから、千葉県を中心に展開するスーパー、ワイズマートの吉野社長のインタビューを取り上げます。
多くの経営者が「社員に当事者意識を持ってほしい」「自ら考えて動いてほしい」と願っています。人手不足が深刻化し、シビアな消費動向が続く今、社長一人の頭脳で全店舗をコントロールすることには限界があります。
今回の事例は、現場のパートスタッフまでを「賢い経営者」に変貌させるための、具体的かつ大胆な仕組みを提示してくれます。
売り場ごとのPL開示が生んだ「店主集団経営」
ワイズマートは、ドラッグストアなどの異業種参入で競争が激化するなか、既存店売上高が前年比6〜8%増と好調を維持しています 。その原動力となっているのが、日本経営品質賞大賞を受賞した「店主集団経営」です 。
記事では、社長を務める吉野氏が以下のように述べています。
「我々は鮮魚や総菜など売り場ごとにPL(損益計算書)を作成して、全社員にオープンにしています。みんなが経営者のように考えて動ける組織にしたいからです。値上げにしても全42店舗、競争条件はバラバラで、社長がコントロールすることは不可能です」
「社員教育では3つの見るを大事にしています。数字をみる、現場を観察、面談で診断する。結果の数字では怒りません。悔しいのは本人ですから。逆に良かったらめちゃくちゃ褒めます。僕が現場に行くときはPLが書き込まれた紙の資料の束を持っていきます」
2026.3.2_日経MJ新聞
記事では、情報の非対称性の解消と、現場への権限移譲が読み取れます。具体的には、鮮魚や総菜などの売り場ごとにPL(損益計算書)を作成し、全社員にオープンにしていること、全42店舗の売価設定を社長がコントロールすることは不可能として各売り場のチーフに値決めを委ねていることが読み取れます。
特筆すべきは、「3つの見る」による教育です。「数字を見る」「現場を観察する」「面談で診断する」の3つを徹底 。特筆すべきは、「結果の数字では怒らない」という姿勢です 。失敗を許容し、改善の過程を重視することで、現場の心理的安全性を担保しています。
これは、数字(結果)を見て、現場(プロセス)を見て、人(動機)を見る、つまり「動機に働きかけてプロセスを改善し、結果を変える自律型マネジメント」の姿勢が表れています。
全員を「経営者」にするには、情報を透明化し、失敗する権利を委ねよ
この記事から学べる本質は、「情報の共有」と「権限の付与」をセットで行うことで、現場にオーナーシップを芽生えさせるという原則です。
なぜこれが必要なのか。それは、現場が「自分で決めた」という実感を持てない限り、商売の面白さを感じることはできず、結果として改善の知恵も出なくなるからです。
類似事例として、ドン・キホーテ(PPIH)の「デリカの鉄人」が挙げられます。これはアルバイトを含む全従業員を対象にした料理コンテストですが、単なるアイデアだけでなく「原価率」や「想定販売価格」の計算までを求めます。現場にPL感覚を持たせ、合格者を商品開発者に引き上げる仕組みは、まさに経営人材の育成そのものです。
「情報を隠して指示だけ出す」マネジメントは、現場から考える力を奪うどころか、納得感も生まれません。逆に、「数字をオープンにし、赤字になっても値付けを責めない」という覚悟を持つことで、現場は初めて「自分たちの商売」として数字を追い始めるのです。
“午後3時”の着地予想ミーティングを導入してみよう
明日から取り組める具体的なアクションを一つ提案します。それは、「現場主導での着地予想」訓練です。この事例では”午後3時”でしたが、時間や頻度は各会社の状況に合わせて実施してください。
まず、情報の開示です。売り場やチーム単位で、前日の粗利益・売上高を共有します。中間地点で、現場のリーダーが「今日の売上と利益はいくらで着地するか」を予測し、共有ツールに書きだします。そして予測が目標に届かないなら、夕方のタイムセールをどう組むか、現場判断で動かします 。
ここで、重要なのは「共有が風景になること」への対処です。ワイズマートの巧みな点は「前年の自分を超えられるか、自己ベストを更新できるか」という軸で個人を評価しています 。
他店や市場環境のせいにできない「過去の自分」という明確な指標を持たせることで、情報の共有が「他人事」になるのを防ぎます。 社長の役割は、結果の数字を咎めることではなく、「なぜその予測をしたのか、そのためにどんなアクションをしたのか」というプロセスを評価することです。
まとめ
吉野氏は、数字に追われ自己犠牲的に働く現場の人々に「正当に報いたい」と語っています 。
数字を「管理するため」だけに使うのか、それとも現場が「商売を楽しむため」に開放するのか。 後者を選び、現場に「自分たちの商売だ」と思わせることができたとき、社長一人の目では届かなかった「利益の源泉」が、現場の隅々から湧き上がり始めます。
「もし、今日から現場のチーフに『1円も社長の許可なく値決めしていい』と伝えたら、彼らはどんな顔をすると思いますか?」
その驚きと戸惑いこそが、依存から自立へと変わる、組織変革の第一歩です。
本日は日経MJの記事から、店主集団経営の本質を考えました。